本田圭佑、復調の要因。新監督、
ポジション変更など好条件が揃った

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 彼自身は、使われる立場の監督ではなく、使う側のチームマネージャーに方向転換をしたい考えだが、ボタフォゴに来る前にスポーツディレクターをしていたサントスでは、やはり経営陣やホルヘ・サンパオリ監督と問題を起こして辞めさせられている。ボタフォゴでは1年間監督を務めた後にテクニカルマネージャーに就任する契約だったが、それも待たずに彼自身から10月1日に辞任を申し出た。

 ボタフォゴは最下位に近い状態だったが、「それは自分の手腕というよりも、チーム自身がそのレベルにないからだ」とアウトゥオリは判断したのだ。一方、ボタフォゴも結果を出せないアウトゥオリをどうにかしたかったが、なにせ金がないので契約途中に自分たちから解任はできない。その矢先にアウトゥオリのほうから辞任を申し出てくれたのである。

 アウトゥオリの後任となったブルーノ・ラザロニ監督は、アウトゥオリが監督に就任するまではボタフォゴのユースの監督を務め、その後もチームに残っていた。ボタフォゴには新しい監督を雇う資金はないため、彼を監督に昇格させた。余談だが、彼の父のセバスティアン・ラザロニはかつて横浜F・マリノスを率いた経験がある。

◆「横浜FMのチアリーダーたち」>>

 40歳の新米監督は、本田を大事に扱っている。これまでずっとチームにいるので、本田のこともよくわかっている。「彼ほどのプロはいない。練習には、いつも最初にやってきて最後に帰る」と、高く評価している。

 ラザロニが本田のポジションを、中盤の前より、いわゆる背番号8の位置にしたことも大きかったろう。本田は左右を自由に動くことができた。また、難しい戦術を駆使するアウトゥオリに比べ、戦術より選手の特徴を生かしたラザロニのサッカーは非常にシンプルだ。入り組んだ戦術を説明するには、言葉の理解度が必要だが、それも必要ない。監督交代により、本田のモチベーションが高くなったことは明らかだろう。

 本田にとっていいことはまだ続く。ラザロニが監督に就任したのと同じタイミングで、トゥーリオ・ルストーザがチームマネージャーに就任している。彼はかつてのボタフォゴの選手だが、2005年から2シーズン、大分トリニータでプレーした経験を持つ。日本を知る人間がまた近くにいることは心強いだろう。

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