2020.10.04

久保建英とかつて脅威のデュオ。アンス・ファティは「薄味」が特徴だ

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 大半は所在なさそうにしているが、何回かは凄いプレーをやってのける。ただし、動作はとてもスムーズで無理がなく自然体。さらりとした薄味。

 ディエゴ・マラドーナ(アルゼンチン)は10代でキャプテンマークを巻いていたリーダーだった。メッシも普段はおとなしいが、フィールドでは過剰に強気なところがあった。闘う意志はどちらもはっきり見てとれた。

 ファティはそういうタイプではないのだろう。ペレがそうだったように、どこかフワフワとしている。性格というより、選手としてのスタイルの違いなのだと思う。キレを意識させないほど滑らかで、無理を感じさせないほどクレバーだ。とっさにボールタッチを変更する時も、変えたことが目立たない。体勢に変化がない。オーバーヘッドキックですらアクロバティックに見えない。

 ビジャレアル戦では、ジョルディ・アルバのプルバックに対して、ファティとメッシが重なっている。そこがメッシのための場所なのは、カンテラ育ちのファティが知らないはずがない。皆がメッシのために空けてある場所に踏み込んでいってシュートしてしまうのも、意外と図々しいのか、天然なのかよくわからない。

 17歳のアンス・ファティは、大きな才能を抱えたまま茫洋としている。年齢を重ねて変化していくのか、それともほぼこのままいくのか。ただ、現時点では「才能がそこにいる」という種類の選手で、それゆえの不思議な清涼感を漂わせている稀有な存在となっている。

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