人気抜群のクロップ監督。サッカーの根源の喜びをかきたてるキャラクターと戦術 (4ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 ジョゼ・モウリーニョはプレミアリーグの最初の記者会見で「スペシャル・ワン」と自ら称したが、クロップは「私はノーマルだね」と笑いを誘っていた。その飾り気のなさ、ファンの気持ちを代弁しテクニカルエリアで喜怒哀楽を爆発させる情熱、選手に対する人情味で、ファンを虜にした。

 リバプールでは、おそらくビル・シャンクリー(スコットランド)以来の人気者だ。シャンクリーは60~70年代に、のちのリバプール全盛期の礎をつくり、ファンの心情をがっちりつかんだ監督だった。同時に、サッキをはじめ後世に影響を与える印象的なチームをつくった。

 チャンピオンズカップ(現CL)で若きヨハン・クライフのいたアヤックスに完敗して、シャンクリーはパスワークの重要性を痛感したという。それも、その後のリバプールを形成する大きな要因になった。

 クロップのリバプールも、もはやシティと見分けがつかないほどのパスワークを身に着けつつある。先日バイエルンから移籍してきたチアゴ・アルカンタラはそのためのリーダーになるのだろう。だが、これまでファンに支持されてきた情熱溢れるプレースタイルも維持されるはずだ。

 情熱を燃料にした、わかりやすい燃焼系のサッカーは、このスポーツの起源にあったはずの喜びをかきたててくれる。

ユルゲン・クロップ
Jürgen Norbert Klopp/1967年6月16日生まれ。ドイツ・シュツットガルト出身。01年までマインツでプレーし、現役引退後同チームの監督に就任。マインツを初のブンデスリーガ(1部)に導く手腕を発揮した。08年からはドルトムントの監督を務め、低迷したチームをリーグ2連覇に導く。15年にはリバプールの監督となり、18-19シーズンはCL制覇、19-20シーズンはプレミアリーグ優勝を勝ち取った。

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