2020.09.22

ジダンの特異性とトルシエジャパン惨敗。
欧州スポーツの聖地で見た事件

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

「今日だけは勝たせてくれ」

 スタッド・ドゥ・フランスは、フランスW杯の18年後にもユーロ2016というビッグイベントを開催している。W杯とユーロの決勝を、両方開催したスタジアムといえば、ウェンブリー(1966年W杯と1996年欧州選手権)と、ミュンヘン五輪スタジアム(1974年W杯と1988年欧州選手権)も該当する。しかし、前者はその後、新スタジアムにリニューアルされ、後者は現在、サッカースタジアムとしての機能を果たしていない。

 一方、スタッド・ドゥ・フランスは、チャンピオンズリーグ(CL)決勝も2度開催している。1999-00シーズンのレアル・マドリード対バレンシア、2005-06シーズンのバルセロナ対アーセナルだ。

 さらに2003年には世界陸上を開催。また2023年には、2007年に続き、ラグビーW杯決勝の舞台になることが決まっている。そして、2024年パリ五輪だ。1998年の開場以来26年間に、W杯、CL決勝、世界陸上、ラグビーW杯、ユーロ、五輪と、世界のスポーツ界6大イベントのメイン会場を任されたスタジアムは他にない。スタッド・ドゥ・フランスは現代におけるスポーツの聖地として存分に機能している。

 サッカー、ラグビーと陸上を共に開催できるのは、スタンドが可動式だからだ。サッカーやラグビーで使用する時に存在するスタンドの1階部分は、陸上競技で使用される時は格納され、そこがトラックとして使用される。東京の(新)国立競技場は、なぜこの方式を見習わなかったのか。東洋のスタッド・ドゥ・フランスを目指してほしかった。

 それはともかく、筆者は1度、このスタジアムでなんとも言えぬ体験をしている。2001年10月6日。それは、トルシエジャパンがサウサンプトンでナイジェリアと親善試合を行なった前日に起きた出来事だった。

 フランス対アルジェリア。いつもの通り、スタッド・ドゥ・フランスの報道受付に向かえば「あなたの取材申請は受け取っていないので、今日は入場できません」と、係員は冷たく言い放ってきた。こちらが、そんなはずはないと抗議すると、面倒くさそうに「だったらこれで見て下さい」と、一般席のチケットをさし出した。せわしなく、心ここにあらずといった対応だった。