バイエルンで無双のチアゴ・アルカンタラ。クセが強いプレーが魅力的 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

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バイエルンの新名将フリック。新機軸戦法の正体>>

 もし、そこでボールを失っても守備から切り離される選手がいない。ウイングが縦方向のコースを遮断して守れば、相手はボールを中央にしかつなげない。そこでバイエルンは一気にプレッシングを仕掛けてボールを奪う。ここで奪えれば、攻撃に移行しようとしている相手の守備は半壊しているので、バエイルンは崩す手間がいらない。

 リバプールと似た攻守の考え方だが、バイエルンは後方でのビルドアップを重視しているのが違いである。リバプールは相手に引かれてスペースを消される前にロングパスを使おうとするが、バイエルンは後方で確保してから、対角の方向へ長いパスをウイングへ届ける。

 バイエルンのほうが確実性はある。それが可能なのは、チアゴがいるからだ。リバプールが、チアゴを獲得したがっているという話もうなずける。

<ブラジル+スペイン+ドイツのブレンド>

 チアゴの特徴は、何と言ってもテクニック。まずパスの受け方がうまい。

 中盤の底は、ボールを失ってはいけない場所だが、同時に失いやすい場所でもある。ボールが来る方向とは反対側に相手がいるので、ボールと相手を同時に見ることができない。

 受け方の原則は、足下からボールを離さないこと。少しでも体から離れれば、背後の相手がすかさず襲い掛かってくる。ピタリとコントロールし、すばやくパスできなければプレーできない。

 チアゴはワンタッチで背後の相手を外してしまうプレーが得意だ。右へ行くと見せかけて左、左と見せて右、足裏でボールを静止させてから逆を取るのもうまい。

 背後からのプレッシャーは、言わばチアゴの大好物である。中盤の底はバイエルンがハイプレスでボール奪取を狙う場所だが、自分たちにはチアゴがいるので安全というわけだ。

 コンタクトプレーの激しいブンデスリーガで、チアゴは持ち前のうまさに力強さを加え、ボールを奪い取ることも多くなった。29歳。案外時間がかかってしまったが、チアゴは攻守に完成された選手になった。

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