現代サッカーの一大派閥「ラングニック流」。その戦術を徹底分析する

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 ラングニックと直接の関係はないが、リバプール(イングランド)のユルゲン・クロップ監督のサッカーがラングニックの影響を受けているのは明らかだ。クロップはドイツ・シュツットガルトの出身で、同地域は「シュツットガルトスクール」と呼ばれる一種の学派があった。その教義にラングニックは関わっていた。

 ボールポゼッションに価値を置かず、速い攻め込みとハイプレスによる高強度サッカーという基本的な考え方は、ラングニックとクロップの共通点だ。

 ラングニックと直接関係のある監督は、ユリアン・ナーゲルスマン(現ライプツィヒ)、ロジャー・シュミット(現PSV/オランダ)、トーマス・トゥヘル(現パリ・サンジェルマン/フランス)などがいて、弟子6人がブンデスリーガの指揮官に収まったこともあった。クロップのような間接的な影響を合わせると、かなりの数の"ラングニック派"がいる。

<源流はアリゴ・サッキ>

 ラングニックの師匠筋は「法王」とも呼ばれたヘルムート・グロース。グロースは5部のクラブを率いていた監督だったが、マンマーク+リベロが支配的だったドイツサッカーでいち早くゾーンティフェンスを導入していた先進性があった。ラングニックはグロースの戦術理論に感銘を受け、ふたりは戦術分析と研究を進めていった。

 そのころにミラン(イタリア)のビデオを繰り返し見て分析していたという。アリゴ・サッキが率いていたミランだ。

 1988-89シーズンのチャンピオンズカップ(現CL)を制したミランは衝撃的だった。その度合いは今回のバイエルンの比ではない。バイエルンはパリ・サンジェルマンと決勝で好勝負だったが、ミランはステアウア・ブカレスト(ルーマニア)を4-0で粉砕している。

 それは、同じサッカーに見えないほど新旧のコントラストが明確だった試合で、いわゆる「他の惑星から来たチーム」という印象を与えていたものだ。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る