2020.09.08

マンU本拠地で見た、魅惑の両ウイング&
レアル主将の魔術的ドリブル

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 布陣は4-4-2。マイボールに転じると2-4-4に変化する。マンUの先制点は前半17分。ポール・インスのクロスボールを、左ウイングのギグスがヘディングで合わせた得点だった。20歳になったこの若者は、しかし、拳を軽く上げただけで、派手に喜ぼうとはしなかった。

 左にギグス。右には、アンドレイ・カンチェルスキスというウクライナ出身のロシア代表選手を配していた。

 筆者が両ウイングを置くサッカーに好意的になる理由は、その昔、放送されていた名物サッカー番組『ダイヤモンド・サッカー』でお茶の間観戦したマンチェスター・ユナイテッドに起因する。ゴードン・ヒルとスティーブ・コッペルが両翼を張る、70年代のある時代のサッカーになるが、この時のギグスとカンチェルスキスも彼らと同様、こちらを虜にした。

 ギグスは左利き。現在は左利きを右ウイングに置く傾向が増しているが、当時は、左利きは左に、右利きは右に置くのが一般的だった。

 ギグスの折り返しがアシストになった3点目のゴールは、8割方、オフサイドのように見えた。バックラインの背後を抜けだしたギグスにパスが出た瞬間である。しかし副審は、オフサイドフラッグを挙げなかった。挙げられなかったと言うべきだろう。正面スタンドに座る観衆が発露する殺気を、目一杯、背中に浴びていたからだ。副審が流さざるを得ないこの状況を作り出すオールド・トラッフォードの観衆に、ファン気質の真髄を見た気がした。

 ギグスは終了間際にもドリブルで数十メートル前進し、決定的なチャンスを演出した。低い重心のフォームから、ボールを1回1回引きずるようにドリブルで前進すると、観衆は一斉に身を乗り出すのだった。

 マンチェスター・ピカデリー駅からメトロリンクで、クリケットグラウンド脇にある駅まで15分~20分程度。試合日に限り、マンチェスター・ピカデリー駅からスタジアム駅直行の電車も運行されている。鹿島神宮駅から鹿島スタジアムに向かう電車のようなものだが、鹿島スタジアム駅がスタジアムから何百メートルか離れているのに対し、オールド・トラッフォード駅は正面スタンドのほぼ真横。数十メートルという近距離にある。