2020.09.03

久保建英は「居場所」を獲得しつつある。
最前線で戦術的に適応

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuk
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 レアル・ソシエダ戦の久保は、トップ下で先発しているが、中央だけでなく、積極的にサイドにも流れていた。サムエル・チュクウェゼ、モイ・ゴメスともポジション交換。パスを呼び込んでいたし、連係も見せていた。

 そして、前半終了間際のプレーは白眉だった。自陣の深い位置で味方がボールを奪い返した後、相手ディフェンダーと並走しながらボールを受け、一度キープと見せかけて相手を誘い込んで入れ替わる。そして追走してきたもうひとりのディフェンダーをスピードで置き去りにし、必死にユニフォームをつかんだ相手にイエローカードを出させた。

 後半途中に、チュクウェゼが交代で下がってからは、右サイドでプレー。裏に走り込んだフェル・ニーニョに対し、得意の左足で鮮やかなラストパスを送って見せ、非凡な技術を示した。また、直後にはドリブルの駆け引きでファウルを誘発し、FKを獲得している。

 81分に交代で退くまで、久保はチームの中で機能していた。

「エメリは、(レアル・ソシエダ戦で)真実のチームを手にした」

 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は、この日のビジャレアルを高く評価している。戦術家エメリの色が濃く見えた試合と言えるだろう。

 もっとも、これもプレシーズンマッチのひとつに過ぎない。相手のレアル・ソシエダは、ミケル・オジャルサバル、ミケル・メリーノ、ディエゴ・ジョレンテ、ダビド・シルバなど主力が代表招集やコロナ感染で欠場。後半は、Bチームに近い陣容だった。ビジャレアルも、エースのジェラール・モレノやパウ・トーレスがスペイン代表に呼ばれていた。

 あくまでも、本番前の前哨戦だ。

「(新しい監督が来て)変化を懸念する声もあるが、新たなアイデアを融合させるために、トレーニングを重ねている。そのためのプレシーズンで、3週間は、戦術を理解しながら、ミスを修正しているところだよ」(ジェラール・モレノ)

 久保は、プレシーズンの変化の中で着実に力を見せつつある。ひとつのポジションにはこだわらない。昨シーズンまで在籍していた主力、サンティ・カソルラに近い役割になるのだろうか。トップ下を中心に、攻撃的なポジションならどこでもやってのけることになるはずだ。

 そして、左利きの指揮官エメリはレフティーを好むところがある。久保の利点を引き出す算段を整えているはずだ。その答えが出た時には、久保が"変化するビジャレアルの象徴"となるのかもしれない。

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