久保建英は「居場所」を獲得しつつある。最前線で戦術的に適応

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuk
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

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 9月2日、ビジャレアルはプレシーズン4戦目となるリーガ1部レアル・ソシエダとの試合を行ない、2-0と完勝している。

 この試合、久保建英は上々のプレーを見せている。この日はトップ下(もしくは2トップの一角)で先発出場。下がってボールを受け、巧みにテンポを作って、決定的なラストパスを出す。ドリブルの切れ味も鋭く、脅威を与えていた。

レアル・ソシエダ戦に先発、81分までプレーした久保建英(ビジャレアル)レアル・ソシエダ戦に先発、81分までプレーした久保建英(ビジャレアル) なにより、戦術的な適応を示している。

 開始1分、ビジャレアルは相手を押し込む形でプレスをかける。久保はその最前線で圧力をかけ、相手のパスミスを誘発。このショートカウンターが、フランシス・コクランのミドルシュートによる先制弾につながった。

 また、28分には波状攻撃で押し込む。相手ディフェンスが慌ててクリアしかけたボールを、久保がブロックする形になって、裏へこぼれた。これにモイ・ゴメスが反応してPKを誘い、パコ・アルカセルが2点目を決めた。

 2020-21シーズンの開幕に向け、久保はウナイ・エメリ新監督が率いるチームにフィットしつつある。

 実はここまでのプレシーズン3試合では、久保の現状を不安視する声も出始めていた。

「Discreto」(地味な、控えめな)

 スペイン大手スポーツ紙『アス』などは、そんな表現を使っている。2部カルタヘナ戦はトップ下で後半から出場、2部テネリフェ戦は右サイドで先発出場、そして1部バレンシア戦は67分から左サイドで出場だった。唯一、先発したテネリフェ戦はチームが敗れ、バレンシア戦では出場時間が短く、各ポジションの「2番手」の印象も与えた。

 しかし、心配は無用だろう。

 そもそも、ビジャレアルは昨シーズン5位になったチームで、主力メンバーは残っている。バレンシアから移籍してきたダニエル・パレホのようなキャリアを積み重ねてきた選手は別にして、昨季から在籍する選手がファーストオプションなのは当然である。監督が代わっても、選手間のコンビネーションは確立されたものがあるのだ。

 そんな状況にもかかわらず、マジョルカから来た久保は新チームで居場所を見つけつつある。

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