バイエルンにあってパリにはないもの。福田正博が感じたクラブ哲学 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

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 MFトーマス・ミュラー、DFジェローム・ボアテング、GKマヌエル・ノイアーなどの経験のある選手たちを尊重し、フリック監督は彼らにスポットライトを当てて、しっかりと起用した。選手がこれを意気に感じないはずがない。彼らが本来のパフォーマンスを取り戻し、最終的にはこれがCL制覇にまでつながったと言っていいだろう。

 一方、敗れたPSGはクラブ創設50周年で悲願の初優勝まで迫ったものの、あと一歩及ばなかった。リーグ戦は新型コロナの影響で3月上旬に打ち切りとなり、CL再開前に何試合か試合ができたとはいえ、コンディショニングは難しかっただろう。準々決勝くらいであっさり負けていても不思議はなかったところ、よくやったと思う。

 ただ、それでも最後は『寄せ集め感』を脱しきれなかったのが、大一番での勝敗に多少影響したように感じられた。

 バイエルンはGKノイアー、DFボアティング、DFヨシュア・キミッヒ、MFレオン・ゴレツカ、MFセルジュ・ニャブリ、MFミュラーと、ドイツ人選手たちがチームの中心になっている。そこにロベルト・レバフスキやチアゴ・アルカンタラといった、スペシャルな力とスキルを持つ助っ人が加わって、チーム力を高めていた。

 これはシャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタを擁してバルセロナが強かった頃にも同じことが言える。

 ここが、毎シーズンCL制覇を期待されながら、ビッグイヤーに届かないPSGやマンチェスター・シティとの違いなのではないかと思う。

 CLの最終ラウンドにもなれば、どのチームにも世界屈指の選手が揃っている。個々の技術やスキルが同レベルで、チーム戦術もほとんど遜色がない。

 しかし、お金をかけてどれだけ一流選手を集めたとしても、最後に勝負を分けたのは、バイエルンにあって、PSGになかったものだった気がする。それはクラブのアイデンティティだったのではないか。

 バイエルンのように自国リーグの代表格で、自国選手が屋台骨を支えているクラブには、長年培ってきた経験値がある。これは選手だけのことではなく、スタッフやサポーターらが持っているものも含めてだ。それが、最終的にタイトル獲得の戦いに臨むチームに大きな影響を与えているように思う。

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