日本人GK黄金時代到来の前兆。
19歳が欧州ユース最高峰の舞台に立つ

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFP/AFLO

 いずれにせよ、日本人GKがユース年代の欧州最強を決める舞台に立つというのは、画期的な出来事と言えるだろう。

 ベンフィカは、欧州で最高レベルの育成組織を誇っている。ジョアン・フェリックス(アトレティコ・マドリード)、ベルナルド・シウバ、ジョアン・カンセロ(ともにマンチェスター・シティ)、ネウソン・セメド(バルセロナ)など、過去10年だけでも、多くの有力選手をビッグクラブへ送り出してきた。それによって得た利益総額は、なんと4億ユーロ(約480億円)とも言われる。

 GKでは、ブラジル代表エデルソンが代表的だろう。16歳の時にブラジルから発掘し、3部リーグ、2部リーグ、1部リーグ下位のクラブにレンタルしながら、じっくり育て上げた。そしてベンフィカのトップチームでデビューさせた後、4000万ユーロ(約48億円)でマンチェスター・シティへ売却。今や世界有数のGKと言える。

 小久保も、柏レイソルの下部組織でカテゴリーを上げていった。ユース年代の国際大会での活躍が見初められて、2019年1月、18歳でベンフィカに入団している。

 はたして、エデルソンに続くことはできるのか?

 欧州でプレーする日本人GKには他にも、フランス人とのハーフのGK山口瑠伊(22歳/188cm)がいる。FC東京の下部組織で育った後、フランスで2年、スペインで4年目。2019-20シーズンは、2部のエストレマドゥーラでトップデビューを飾っている。2020-21シーズンは、2部B(実質3部)のレクレアティボ・ウエルバでプレーする予定だという。
 
 そしてJリーグでも、今シーズンはGKで目覚ましい変革が起きつつある。大迫敬介(21歳、サンフレッチェ広島/187cm)、波多野豪(22歳、FC東京/198cm)、梅田透吾(20歳、清水エスパルス/184cm)、沖悠哉(21歳、鹿島アントラーズ/184cm)、山田大樹(18歳、鹿島アントラーズ/190cm)、谷晃生(19歳、湘南ベルマーレ/190cm)など、若手GKが次々に出場機会を得つつある。GKはたったひとつのポジションで、日本では"聖域"として扱われがちだったが、群雄割拠となることによって競争力が上がってきた。

 はたして、時代を突き破るような日本人GKは出てくるのか。

「自分の場合、身体的にはそれほど恵まれていなかったので、どこで勝負するか、というのは考え抜いてきました。コーチングだったり、ステップを変えたり。そうやって考えてプレーすることで、身についたものもあるんです」

 40歳でトップGKを続ける南は言う。その積み上げを怠ったら、どんなにポテンシャルの高いGKであっても、成長は見込めないのだろう。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る