小野伸二の雄姿に震えた。
日本サッカー史に残るシーズンの大団円

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

このUEFAカップ決勝が行なわれた2年前、オランダ、ベルギー共催のユーロ2000が開催された。

 ホテルの目の前のラウンドアバウトには大きな噴水があって、大会期間中、そこからオランダの国民的なカラーであるオレンジ色の水が放出されていた。
 
 決勝の舞台はデ・カイプで、対戦カードはイタリア対フランス。そして勝ったのはフランスだった。

 開催国オランダは準決勝でイタリアに延長PK負けしていた。アムステルダムのアレーナ(現ヨハン・クライフ・アレーナ)で行なわれた試合を圧倒的に支配しながら、試合中に得たPKを2本外した挙げ句、赤紙退場で10人になったイタリアに徹底的に守られ、0-0のまま延長PKに持ち込まれてしまった。

 そして敗退。PK戦でも、イタリアGKフランチェスコ・トルドと対峙したオランダは、6人蹴って5人が外すという体たらくを演じてしまった。つまり、この試合ではPKを8本蹴って7本外したわけだ。

 笑ってしまったのは、アムステルダムからロッテルダムのホテルに戻ると、目の前の噴水がイタリアカラーであるブルーに変色していたことにある。サービス精神溢れるオランダ人の、奇妙な気質を垣間見た瞬間だった。

 だが、そのイタリアは、デ・カイプで行なわれた決勝で、フランスを90分まで1-0でリードしながら、土壇場で追いつかれてしまう。そして延長でひっくり返され優勝を逃した。準決勝で成功したカテナチオ戦法が決勝では仇になった格好だった。

 この結果を喜んだのは、フランス人サポーターだけではなかった。デ・カイプの半分以上を埋めたオランダ人も、「カテナチオ敗れたり!」と、フランス人と一緒になって万歳をくり返した。

 その時、夜空はオレンジ色に染まっていた。デ・カイプの流麗なフォルムの銀屋根にそれが反射する光景がまた鮮やかで美しかった。

 ロッテルダム中央駅から、トラムに揺られること15分~20分。なんとも言えぬ美しいスタジアムだ。スタンドの傾斜角はさほどでもないが、これぞフットボール・グラウンドと言いたくなる、デ・カイプは悠揚迫らざる大らかな雰囲気に包まれたスタジアムだ。

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