2020.08.28

速い、巧い、強いだけじゃない。ニャブリが示す近未来サッカースター像

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

疾風怒濤。ニャブリ&レバンドフスキの破壊的攻撃の中身はこちら>>

 この中央エリアでのパスレシーブは、ボールが来る方向と相手が寄せてくる方向が一致しない場合が多い。つまり、ボールと相手を同時には見られないので、パスを受けるのが難しい。ただ、一流のプロならば本来はどうということはないはずである。しかし、バイエルンは中央エリアにほとんどパスを入れていない。意識的に回避しているのだ。

 これはバイエルンだけではなく、ヨーロッパリーグで優勝したセビージャや、CLベスト8に躍進したアタランタも同じだった。ネイマールのいるパリSG、メッシのバルセロナはそのかぎりではないが、相当なタレントを擁していないかぎり、中央エリアは攻撃で回避すべき場所との認識が広がりつつあるようだ。

 逆に言えば、このエリアでのプレッシャーがそれだけ強くなっている。攻撃で中央を回避するチームほど、守備ではここにリソースをつぎ込んでボール奪取を狙っていた。バイエルンは典型で最も成功していたが、ライプツィヒ、リヨン、アタランタも同じ傾向だった。ここに地雷を埋め込み、攻撃では地雷を踏まないように振る舞うわけだ。

 メッシ、ネイマールなど、攻撃のスーパースターはこのエリアで輝きを放ってきた。しかしバイエルンは、このエリアのスターを使わない。フィリペ・コウチーニョはウイングで起用されていた。

「違い」をつくるクリエイターはサイドなのだ。前向きにプレーして、スピードとテクニックを最大限に発揮するウイングである。とくにスピードがモノをいう場所であり、バイエルンの両サイドがニャブリ、キングスレイ・コマンだったのも偶然ではない。

 昔風の背番号で言うと、バイエルンのサッカーは8番と10番(インサイドMF)のプレーが欠落している。それが新しさでもあるのだが、現代の舞台で勝負できる8番、10番がなかなかいないのも事実だろう。

 7番(右ウイング)として抜群の働きを見せたニャブリには、1つ内側でもプレーできる可能性がある。バイエルンがさらにスケールアップするとしたら、カギを握っているのはニャブリだろう。

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