速い、巧い、強いだけじゃない。ニャブリが示す近未来サッカースター像 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 精密なボールタッチとスピード、さらにコンタクトプレーにも強い。守備への切り替えとプレスバックの速さという、バイエルンの戦術のなかでの重要な仕事もこなしている。

 点が取れて、アシストができて、スピードとパワーを兼ね備え、守備でも貢献できる。フィジカルに裏打ちされた万能感は、まさに現在のバイエルンのスターと呼ぶに相応しい。

<クリエイターはサイドにいる>

 2019-20シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)ベスト4は、ドイツとフランスのチームで占められた。バイエルン、パリ・サンジェルマン(パリSG)、ライプツィヒ、リヨンである。これまではスペイン勢、イングランド勢が上位を占めるのが普通だったが、ドイツとフランスでベスト4は珍しい。

 優勝したバイエルンはパリSGとの決勝で、6人の黒人選手を先発させていた。クラブチームの多人種化は今に始まったことではないが、ドイツとフランスは比較的黒人選手の比率が高い。18年ロシアW杯で優勝したフランス代表も、黒人選手の比率はバイエルンに近かった。

 黒人選手のすべてがそうだとは限らないが、フィジカルの強さは特徴と言っていいだろう。黒人選手の多さは、現代サッカーがそれだけ強力なフィジカル能力を必要としているのを表している。CLベスト4のうち、パリSGを除く3チームは、技術か体力かと言えば体力のサッカーだった。

 バイエルンは徹底したサイド攻撃を仕掛けていた。中央エリアにいるレバンドフスキ、トーマス・ミュラー、レオン・ゴレツカはそこではあまりボールを受けず、パスが来てもワンタッチで返すようなシンプルなつなぎに徹していた。

 たまにハーフスペース(サイドと中央の間)でボールを受けて前を向くニャブリは、むしろ例外的な攻め方である。レバンドフスキ、ミュラー、ゴレツカはゴール前に入ってくるクロスボールに飛び込むのが重要な役割になっていて、その手前のセンターサークルからペナルティーエリア外までの中央エリアは、この3人にとっては「控室」のようなものになっていた。

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