ロナウド中心にピルロ・ユーベ始動。「誰からも文句が出ない」のが不安?

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

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 ユベントスのベンチはその主を変えた。最後までユベンティーノの反感をぬぐい去れなかったマウリツィオ・サッリから、最愛のヒーロー、麗しきサッカーの象徴であるアンドレア・ピルロへ。これで誰もが満足、幸せになるはずだ。

 しかしひとつだけ大きな疑問がある。それは"経験不足"。ピルロは確かに誰もが認める偉大な選手だった。しかし監督の経験は小指の先ほどもない。いうならば免許取りたての青年に、いきなりF1レースでフェラーリのマシンを運転させるようなものだ。

 ユベントスの番記者時代、私はほぼ毎日、ピルロと顔を突き合わせていた。だからアンドレアのことはよく知っている。その経験から言うと、大失敗する可能性よりも成功する確率の方がかなり高いと思う。

ユベントスの監督に就任したアンドレア・ピルロ photo by Reuters/AFLOユベントスの監督に就任したアンドレア・ピルロ photo by Reuters/AFLO ピルロは決して口数は多くはないが、口を開く時には価値のあることしか言わない人間だ。「マエストロ」と呼ばれていた選手時代からチーム内のリーダーであり、ロッカールームで自分の意見を述べる時には誰にも邪魔させない。監督になった今もその静けさは変わりないだろう。声を荒げることはまずない。しかし視線のひとつ、仕草のひとつで彼は自分の意思を通じさせることができる。

 もうひとつピルロの大きなアドバンテージは、アンドレア・アニエッリ会長が直々に彼を監督の座に望んだということだ。だからその地位は、しっかりすぎるほど安定している。チームは彼を心底信頼し、すべての面において彼をバックアップするだろう。こうした信頼はサッリの時には一度も見られなかった。

 ピルロはユベントスのみならず、イタリアの揺るぎないスター選手だった。2013年、コンフェデレーションズカップで代表を引退した時は、サッカーの殿堂マラカナ・スタジアムの観客が総立ちとなり、彼に惜しみない拍手を送った。

 ひとつだけ注意しなければいけないのは、監督となった今、ピルロは自分のプレーを忘れる必要があると言うことだ。絹のような柔らかいボールタッチ、30メートルあっても正確無比なパス、上昇した後に、最後の瞬間に急降下しGKは動くこともできないFK......。それらを彼は自分の選手に教えることはできない。

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