スペインの夢を粉砕。小国ポルトガルの知恵が光る今季のCL集中開催地 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

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 話をうかがおうと、スタジアム完成後、ダメもとでその事務所を訪ねたが、案の定、超多忙につき面会は叶わなかった。だが親切にも、こちらが書面で送ったいくつかの質問には丁寧に答えてくれた。

 この3つのスタジアムに共通して言えることは、色遣いのカラフルさだ。文面には「フリーデザイン」という言葉で紹介されていた。ジョゼ・アルバラーデの、スポルティングのチームカラーを基調に各色を随所に散りばめた座席シートはまさにフリーデザインそのもので、おもちゃの国を訪れたような、童心をくすぐられる楽しげな感覚に襲われる。

 タベイラさんはスタジアムのコンセプトを「FEC」と記していた。ファミリー・エンターテインメント・センターの略である。ショッピングセンター、シネマコンプレックス、ボウリング場、レストラン、スポーツバー、ファンショップ、スポーツショップ、ゲームセンターなど、さまざまな店舗及び娯楽施設が、スタジアム内に併設されている。

 さらに言うならトイレだ。藍色をした「アズレージョ」というポルトガル名産のタイルが壁の全面に施されていて、美しくも上品なのだ。トイレというあまり触れたくない場所が、FECのコンセプトを地で行く洒落た場所になっている。

 しかもスタジアムの場所は駅の目の前。アクセスも抜群だ。試合がない日でも、スタジアムには人が頻繁に出入りしている。スポルティングがアウェー戦を行なったある週末も、スタジアム内のスポーツバー周辺はファンの姿で溢れていた。各所に設置された大型テレビに、試合の模様が映し出されていて、ファンはその模様を見守っていた。

 ユーロ2004で大会実行委員長を務めるアントニオ・ラランジョさんに話をうかがう機会に恵まれたので、そのコンセプトを讃えると、こう返してきた。

「従来のスタジアムは、使用するのはホーム戦が行なわれる2週間に1回程度。利用価値のない日が多いことが最大の欠点でしたが、それが常識とされていました。周囲に圧倒的なインパクトを与える一方で、使用頻度は低い。巨大なコンクリートの塊と化していました。

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