2020.08.17

6歳でプロになると決意。怒れるルカクはデカい選手の育成の好例だ

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

華麗で美しい世界の女子サッカー選手たちはこちら>>

 小学生のなかに中学生か高校生がプレーしている図を想像してみてほしい。しかも、その年長者が何の加減もなく体をぶつけ、腕でつきとばしているような光景は、一種異様だったに違いない。

「俺が失敗することを願っている人が常にいる。だが、そんなことは俺には関係ない。前に進むだけだ」(ルカク)

 このコメントはプロになってからのものだが、子どものころからそれは同じだったのではないか。子ども時代から試合のたびに相手チームの親から国籍を問われたり、体格の違いにクレームをつけられたりしていた。

 がむしゃらにプレーする大きな少年は白い目で見られていただろう。だが、6歳でプロになると決意したルカクには、知ったことではないわけだ。ひたすら前へ進むしかないのは、当時からそうだったはずだ。

 ルカクの原動力は「怒り」である。

 貧しさへの怒り、CLが見られなくなった怒り、周囲の無理解、人種差別への怒り。シュートを決め、結果を出して、のし上がる。そのためには体格差も存分に利用するし、足りないテクニックがあれば練習する。怒りが原動力だから手加減はない。

 ただ、ルカクにはストライカーにありがちな自己中心的なプレーがあまりない。パスすべき時にはするし、守備もしっかりやる。味方のためにオトリになるようなプレーも厭わない。怒りが原動力の上昇志向とは矛盾しているようにも思えるが、ルカクのプレーはサッカーセンスのよさを感じさせるのだ。

 6歳の時点でプロになると決めているが、「プロ」の前に「サッカー」があった。何かほかの分野でプロになろうとしたわけではない。CLがテレビで見られなくなったのも怒りの一つだったというから、サッカーが大好きな少年だったわけだ。

 指導者もよかったのかもしれないが、サッカーで成功するには冷静でいること、自分勝手ではうまくいかないことを知っていたのだと思う。

関連記事