2020.08.07

メッシが同じスーパープレーを何度も決められる不思議を解明する

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

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 相手の動きを読み切っていて、ほぼ癖のように抜いてしまっている。速いのは間違いないが、速さだけで抜いているわけではなく、相手の反応が手の内に入っていて、将棋でいえば常に王手飛車取りのような状態。足を出さなければ通過、出せば股抜きという具合である。

<ミニマリズムのプレーぶり>

 ジャン=ピエール・パパン(フランス/1980年代後半から90年代に活躍)が、現役時代にシュート練習のシーンを集めたビデオを出したことがある。

 ドリブルシュート、コントロールしてからのシュート、クロスボールをダイレクトで、ボレーで、オーバーヘッドで、さまざまなシュートを当時まだ新しかったスーパースローを駆使して見せていた。

 スーパースローを見て気づいたのは、パパンがボールを蹴る時の足のポイントが常に同じだという点だ。ドリブルシュートでもオーバーヘッドでも、足のどこでボールの中心を叩くかが一定だった。蹴ることに関して、パパンとボールの関係性ができあがっていたわけだ。

 メッシのキックにも同じことが言える。パス、シュート、FKと、どのキックでも一定しているが、メッシの場合はトップスピードのドリブルでもボールとの関係性が一定なのは前記のとおりである。その結果、プレーが広い意味でパターン化されているように見えるのだと思う。

 サッカーでまったく同じ状況はないが、同じような状況はある。そこでどういうプレーをするかは自由度の大きいスポーツなのだが、合理的な選択をすると実はそんなに多彩である必要はないのかもしれない。メッシが毎回同じようなプレーをしているのは、それで用が足りているからだ。

 たとえば、FKの得点率がすごいことになっているが、メッシのFKのシュートにことさらすごいという印象はない。カーブをかけて落とす、球筋は至って普通で、いわゆる魔球の類ではない。仮に、もう少しゴールが小さければ、あの弾道では入らないのではないかと思うこともある。