CLではベスト16が限界でも、
欧州一のサッカータウンはここだ

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

「今日の試合どうだった?」。目をパチクリさせながら、彼は車内の誰とはなしに問いかけたが、すぐに反応する者はいなかった。グラスゴーの地下鉄は、ロンドンの地下鉄より小さい。奥の方に座っていた青年が、密室の重苦しい空気に耐えかねるように「2オール」と発するまで、時間はとても長く感じられた。

「じゃあ、ダメだったわけ、1次リーグ突破は......」

 瞳を閉じ、じっとしていた年配のファンは、青のマフラーがきつく巻かれたその太い首を2、3度横に振り、渋面を際立たせた。

 翌朝、グラスゴー市内から空港に向かったタクシーには、どういうわけかバルセロナのステッカーが貼られていた。「バルサファン?」と運転手に尋ねれば「イエス」の答え。筆者がライターで、CL第4週に行なわれたミラン対バルサ戦をサンシーロで観戦したと伝えれば、「リバウドがハットトリックをした試合を見たのか」とキレのいい答えを返してきた。

「レンジャーズとバルサ、どっちが好きかって? それはレンジャーズさ。当たり前の話だ。俺が一番見たいのはバルサ対レンジャーズ。やっぱりサッカー観戦はCLに限るよ。スコットランドリーグより断然レベルが高くて面白い。で、今日はこれからどこへ行くんだい? マンチェスター? げっ。俺はあのチームが大嫌いだ。スコットランド人は皆そうさ」

 ドライバーがレシートを差し出しながら最後に発した台詞がイカしていた。

「来シーズンのCLにまた来なよ。待っているから」

「オッケー!」

 そして約束どおり2001-02シーズン、グラスゴーを訪問した。レアル・マドリード対レバークーゼンのCL決勝を観戦取材するためだ。訪れたのはハムデンパーク。ちなみに、UEFAは決勝の舞台として当初、アイブロックスを希望したそうだ。しかしスコットランド協会が、ナショナルスタジアムであるハムデンパークでの開催を望んだとのこと。次にグラスゴーで決勝を開催するなら、ぜひアイブロックスでお願いしたい。



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