欧州をざわつかせるアタランタ。ローカルヒーローの生きざまを見よ! (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

無料会員限定記事

 プレースタイルはさらに似ている。カイザーは左ウイングなのでプレーするサイドがイリチッチと違うが、長身にもかかわらず軽快で足下が異常に柔らかい。カイザーがプレーした60~70年代には珍しかったシザーズもやたらとうまい。

 左足のキックは独特で、きりきりとカーブしながらターゲットへ柔らかく届く。アヤックス一筋でプレーして31歳で引退したカイザーは、ヨハン・クライフと双璧のエースだった。

 もうひとり、思い浮かんだのはリバウド。ブラジル代表のレジェンドで、左足の強烈なシュートと巧みなテクニックでセレソンの10番を担っていた。身長は185cm、ブラジル代表ではトップ下だったが、バルセロナでは左ウイングでプレーしていた。ただ、リバウド自身はサイドでのプレーが不満で、ルイス・ファン・ハール監督とそのことで確執があったのはよく知られている。

 長身のレフティはたくさんいるが、サイドでのプレーヤーとなると、やはりあまり思い浮かばない。イリチッチは希少種のひとりということかもしれない。

<ローカルヒーロー>

 相棒のアレハンドロ・ゴメスもそうだが、イリチッチは「ちょうどいいスター」だと思う。アタランタには不可欠で、もっと大きなクラブでもプレーできるだろうが、32歳の年齢は移籍するにはネックだろう。

 世の中、レアル・マドリードやマンチェスター・ユナイテッドのようなビッグクラブばかりではない。と言うより、そんなチームはピラミッドの頂点にいるほんのひと握りだけだ。圧倒的多数はそんなにビッグでもリッチでもない。

 たとえば、中東資本が参入して超リッチになる前のパリ・サンジェルマン(PSG)は、フランスリーグではビッグでリッチだが、ヨーロッパ全体となるとそこまでではなかった。

 もちろんチームにスター選手はいたが、そんなにスーパースターでも意外と困る。ジョージ・ウェア(リベリア)やロナウジーニョ(ブラジル)は、その意味でクラブの規格に合わないぐらいのスーパースターだったので、すぐに移籍してしまった。ウェアはミラン、ロナウジーニョはバルセロナで、それぞれバロンドールを受賞している。

全文記事を読むには

こちらの記事は、無料会員限定記事です。記事全文を読むには、無料会員登録よりメンズマガジン会員にご登録ください。登録は無料です。

無料会員についての詳細はこちら

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る