ネイマールが本来の姿を取り戻せた要因とは。絶好調でパリSG残留濃厚 (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

「パリ・サンジェルマン、危うし!」。トゥヘル監督は、そう見られても仕方のない状況に追い込まれた。

 だが、この苦境のなかでも希望の光は残されている。それが、背番号10番を背負うもうひとりのエース、ネイマールの存在だ。

 中断後にトレーニングを再開してからのネイマールの充実ぶりは、目を見張るものがある。2017年夏にPSGに加入して以来、最高の状態と言っても過言ではないだろう。実際、フランスカップ決勝の前に行なったトレーニングマッチ3試合を見ても、その違いは明らかだった。

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 まず、7月12日のル・アーブル戦は「ファンタスティック4」の一翼として4−4−2の左MFで先発し、ほかのレギュラー組と同じく45分間プレー。21分には角度のないところからゴールに流し込み、さらに43分にはPKを落ち着いて決めた。久しぶりの実戦だったにもかかわらず、ブランクを感じさせない軽快な動きを見せている。

 7月17日のベフェレン戦ではPKを決めたあと、マウロ・イカルディとエムバペのゴールをお膳立て。さらに7月21日のセルティック戦でも、開始早々にエムバペのゴールをアシストすると、25分にはケーラーのクロスから自ら右足で叩き込み、1ゴール1アシストを記録した。

 そして迎えたフランスカップ決勝。前半14分、アンヘル・ディ・マリアとのワンツーで抜け出したエムバペが放ったシュートを相手GKが弾くと、ネイマールはすぐさまボールに飛び込んでゴール。結果、これが決勝点となってチームを優勝に導いたのである。

 再開後の4試合で、計5ゴール3アシスト。この数字だけでも調子のよさがうかがえるが、それ以上に印象的なのは、プレー中の明るい表情にほかならない。

「アレグリア(喜び)がフットボールのエネルギー源」と言ってはばからないネイマールにとって、ただ歯を食いしばるだけではなく、いかにプレーする喜びをピッチで表現できているかが調子を計るバロメーターだとすれば、間違いなく現在のそれはマックス値に近い状態にあると見ていい。

 もちろん、中断前最後の試合となったチャンピオンズリーグのラウンド16第2戦・ドルトムント戦で見せたパフォーマンスをキープし、最高のコンディションで再開を迎えることができたのも、リカルド・ロサ個人トレーナーの指導のもと、母国ブラジルで続けたハードな自主トレを遂行した成果と言える。

「ネイ(ネイマールの愛称)は調子もよく、メンタルも良好だ」

 その姿を見たトゥヘル監督も、そう太鼓判を押したほどだった。

 サッカー史上最高額となる移籍金2億2200万ユーロ(約275億円)で加入して以来、度重なるケガと昨夏のバルサ移籍騒動によって、すっかりその名声も地に落ちかけていた。だが加入して3季目、ようやくネイマールは本来の姿を取り戻そうとしている。

 クラブもネイマールとエンバペを軸とした次なるプロジェクトを推進すべく、ネイマールとの契約延長交渉をスタートさせた。それもあってか、頻繁に取り沙汰されていたバルセロナへの移籍話もすっかり立ち消えた格好だ。

 残念ながら、最愛のパートナーであるエムバペとの「MNホットライン」はしばらく拝めそうにない。しかしそれをバネにして、ネイマールが復帰を目指す親友のためにアタランタ戦で大暴れする可能性は高い。その山を乗り越えることができれば、おそらく準決勝にはエムバペも復帰できるはずだ。

 トゥヘル監督率いるPSGは、1994−1995シーズン以来となるクラブ史上最高のCL準決勝の壁を越えることができるのか。

 エディンソン・カバーニが退団した現在、そのカギを握るのは、ネイマール、エムバペ、ディ・マリア、イカルディによる「ファンタスティック4」だろう。とりわけ、心身ともに充実しているネイマールの活躍こそが、悲願達成の条件となる。

 今後のPSGは、7月31日にリヨンとのフランスリーグカップ決勝戦を戦ったあと、8月5日のソショーとのトレーニングマッチを経て、8月12日にアタランタとの決戦を迎える。

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