2020.07.24

メッシとも協調。バルサでもポジションをつかんだビダルの生命力

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

 攻撃時にメッシは中央へ移動する。そして守備はしない。そこで右のインテリオールにはサイドへスライドしての守備が求められる。右のハーフスペース(サイドと中央の中間エリア)とサイドをカバーする役割に、運動量と守備力を兼ね備えたビダルはうってつけなのだ。

<協調しながら個性を発揮する生命力>

 2019-20シーズン、バルサはメッシのパートナー探しに苦しんでいた。

 スアレスはいる。しかし、かつてのネイマールにあたる選手がいなかった。右からメッシが繰り出す長いパスを受けてフィニッシュできるアタッカーがいない。左SBのジョルディ・アルバ(スペイン)はメッシとの感覚を最も共有できる選手だが、SBなのでスタートポジションが低く、アシストはできてもフィニッシュを期待するのは難しい。

 ネイマールに代わる選手としてアントワーヌ・グリーズマン(フランス)を補強したのだが、期待外れに終わっている。メッシとのコンビネーションを確立できず、グリーズマン自身も調子を落としてしまった。アンス・ファティ(スペイン)ではまだ経験不足は否めず、ウスマン・デンベレ(フランス)は負傷離脱したまま。

 メッシは、得点からアシストへ、徐々にプレースタイルをシフトしている。今季得点王とアシスト王を獲っているが、優勝するためにはもっとアシストがあるべきだった。ドリブルで密集へ突っ込んでいく"ラッシュ"も相変わらずやっているが、頻度は減っている。

 少し引いた位置からピンポイントのパスを狙うほうへシフトしたなかで、パートナー不在は痛かった。メッシが引けばゴール前はスアレスだけになり、ターゲットが1つだけではさすがに厳しい。

 その点で、ビダルは攻撃面でも重要な役割を果たしていた。

 メッシが引いた時には、ビダルが中盤から飛び出してピンポイントのロブを引き出していた。アタッカーが引くことで人数不足になる前線を補充していたわけだ。ビダルはヘディングが強く、守備陣の穴を見つける感覚も優れている。何より、前線へ飛び出しても、すぐに戻って守備ができるのがポイントだ。