久保建英は不調でも変幻自在。
ゴール&最高評価で「まさに主役だ」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

『エル・ムンド・デポルティーボ』の表現は、詩的でさえある。

 レバンテ戦の久保はトップコンディションとは言えなかった。リーガ再開後、週2のペースで8試合連続先発出場。コロナ禍によって調整も難しかったはずで、いきなりの連戦による消耗が出てくるのは、必然と言えるだろう。

 動きは重く、いつもの鋭さはなかった。そのため、体力的に厳しくなった後半は、相手ディフェンスにつかまって全身をぶつけられ、倒される場面も目立った。狙われていたことはあるにせよ、いつもの状態なら、すり抜けるか、何らかの対処ができていただろう。リードを守ろうとチームの腰が引けたのもあるが、稼働は明らかに落ちていた。

 すなわち、久保は"悪いなりの"プレーだった。これで勝利できるなら、それでも十分。悪さを極力見せず、誤魔化せるのもプロの力量だ。

 しかし、エースはその定石に甘んじていなかった。

 83分、自陣で味方がつなげたボールを受ける。ドリブルで敵陣へ持ち込むが、スピードは上げない。下がりながら守りを整える相手に、じりじりと迫る。相対したディフェンダーが利き足の左足を切ってきたことで、右に舵を切る。そこで空いたコースから、右足を鋭く振ってファーに打ち込んだ。

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