岡崎慎司、「勇者のゴール」で日本人得点記録更新。集中力は達人の域 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ボールを呼び込み、仕留める。その点で、動きの質がいいだけではない。岡崎の場合、味方選手の動き方や蹴り方など癖を見抜き、そのよさを引き出すことによって、信頼を深めている。それが、同じく能力はありながら、ヨーロッパで活躍できなかった日本人ストライカーたちとの差だ。

 そしてスペインという国では、シーズン二けた得点したストライカーに対し、敬意が払われる。カテゴリーは関係ない。

 2007年6月、スペインのソリアという小さな町のパラドール(昔、王家の宿泊施設だったスペースで、各地にある)では、当時、ヌマンシアに所属していた福田健二が関係者の盛大な祝福を受けている。日本人で初めてリーガで二けた10ゴールを記録し、チーム得点王を獲得。小さな町で、福田はヒーローとして愛されていた。

 アルコルコン戦で岡崎は11点目を決め、福田が持っていたシーズン日本人最多得点記録を堂々と塗り替えている。彼は今や、ウエスカのアイドルと言えるだろう。

 VARによって7ゴールも取り消されている。そんな不運にも負けず、チームを引っ張る姿は雄々しい。そもそも、シーズン開幕前はマラガの経営トラブルに巻き込まれ、合流は開幕してからで、大きなハンデを背負ってのスタートだったのだ。

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