堂安律の本拠地で驚愕のおもてなし体験。名勝負が生んだ美しい光景 (6ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 ミランホームの第1戦(2-0)を終えた時点で、勝負は決したかに見えた。ところが第2戦ではPSVが巻き返した。後半20分までに2-0とし、合計スコアを2-2とした。後半アディショナルタイム。ミランは46分、カカのクロスをマッシモ・アンブロジーニが決め2-3とする。アウェーゴールなので、試合はこれでほぼ決したかに見えた。

 ところがその直後、PSVはフィリップ・コクーがゴールを決め、3-3とする。

 残り時間はあと1分あるかないか。攻めるはもう1点が必要なPSV。守るはミラン。スタンドのファンは総立ちだ。PSVは実際、惜しいチャンスを掴んだ。ノルウェー人の主審、テリー・ハウゲさんの笛が鳴ったのはそのタイミングだった。ラグビーのノーサイドを告げるような響きだった。

 フィリップス・スタディオンを埋めたファンは、敗れたにもかかわらず、ピッチ上の選手たちをスタンディングオベーションで讃えた。PSVの選手のみならず、ミランの選手たちも、そんなPSVのサポーターに拍手を送り返す。するとスタンディングオベーションは、さらに勢いを増すのだった。

 滅多に見られない美しい光景として、いまなお記憶されている。

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