元ブラジル代表主将を襲う悲劇。正直で善良なカフーの笑顔が曇った (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 年が2020年に改まっても、カフーの不運はまだ続いた。今度は仮想通貨に関する詐欺罪に問われてしまったのである。

 昨年の8月、カフーは「アルプクリプト」という会社に頼まれ、同社のイメージキャラクターとなった。顧客が金を預けると、会社はそれでビットコインを買い、価格が上がった分が顧客の儲けとなる。3000ドル(約33万円)を預ければ月末には最大2.5%の利息がつくという触れ込みだった。

 しかし、その会社はもうない。ある程度の金を集めると、社長らはブラジル国外に逃げてしまった。顧客は投資した金を失い、会社を提訴したが、訴えるべき相手はすでに消えてしまっていた。残っていたのは会社の広告塔になっていたカフーだけだった。

 もちろん、カフーは無罪を主張した。自分はただ宣伝に起用されただけで、会社の事業内容には一切かかわっていない。それどころか彼自身も一銭ももらっておらず、自分も被害者だ、と。

 だが、カフーがいくら釈明しても裁判所は聞き入れず、まず4月に彼の銀行にある300万レアル(約700万円)を凍結した。しかしそれだけでは足りないと判断したのか、この6月9日には530万レアル(約1300万円)を差し押さえ、さらに5つの不動産が競売にかけられることとなった。

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