2020.06.26

ピャニッチは「引き算の美学」で輝き。
ユベントスが中盤の底で起用するわけ

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 ピャニッチにはすでにピルロという前例があったので、レジスタ起用はそこまで冒険的ではない。その万能性ゆえに拡散されていた能力を絞り込むことで、ピャニッチの真価を引き出す狙いだろう。

 攻撃能力の高いMFのポジションを下げると、相手のプレッシャーが軽減するのでプレーの精度が上がり、楽にプレーできる。余裕を持たせることで、ゲームを組み立てる能力がより引き出されることが期待できる。

 ディフェンスラインの前にいる司令塔としては、70年代にリベロとして新境地を拓いたフランツ・ベッケンバウアー(当時西ドイツ)の例が挙げられる。ベッケンバウアーはMFとして、すでに世界最高クラスの名声を得ていたが、本人は「息切れ」に悩んでいたという。中盤で走り回るのではなく、リベロとして運動量をセーブできるようになって、チームを統率する役割に集中できるようになった。

 現在のピャニッチも、サミ・ケディラ、ブレーズ・マテュイディといった運動量豊富な味方に支えられ、余裕を持ったプレーができるようになっている。もっと攻撃的に前方でプレーする力があるので、ピャニッチのポジションを下げるのはもったいない気もするのだが、それはピルロやベッケンバウアーにも言えることだった。

 プレーを抑える、引き算することで、チームにより大きな貢献ができる場合もあるのだ。

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