カズのジェノアでのプレーより
印象に残ったスタジアムと震災の記憶

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

「えっ」と目を凝らせば、カメラは倒壊した高速道路を映し出していた。続いて、住宅街の各所から火の手が上がる映像に切り替わった。ナレーションはない。慌ただしいヘリコプターの音のみが響いていた。

 これ、日本じゃない? 日本とイタリアとの間に存在する時差は7時間。日本では早朝5時台の出来事だった。阪神淡路大震災。その悲惨な映像を、日本から遠く離れたジェノバのホテルで眺めることになった。

 カズは結局、わずか1シーズンでジェノアを退団。帰国した。21試合に出場して、挙げたゴールは先述のダービーでの1ゴール。ルイジ・フェッラーリスに駆けつけたものの、肝心のカズが出場しないことはよくあった。

 だが、シーズン後半、ジェノバ・プリンシペ駅からスタジアムまで、乗ったタクシーの運転手は、こちらが日本人であることを確認すると、こう言った。

「今シーズン、すでに日本からジェノバを訪れた観光客はすでに8000人を超えたと言われている。カズ様々。商売繁盛だよ」

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