カズのジェノアでのプレーより印象に残ったスタジアムと震災の記憶 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 初めて訪れたのは90年イタリアW杯。通路を歩く際に鉄柵に手を掛けていないと落下してしまいそうな、まさに壁にへばりついている状態に興奮した記憶がある。スタンドの傾斜角についてうるさくなったのも、この観戦がきっかけだと思うが、それはともかく、94年4月のダービー観戦からほどなくすると、三浦知良のジェノア入団が決まった。

 ご承知のとおり、カズはサンシーロで行なわれた1994-95シーズンのセリエA開幕戦、対ミラン戦(9月4日)にスタメン出場したものの、前半の途中、ミランのフランコ・バレージ主将と空中で激突。鼻を骨折し、その後、戦列を離れることになった。

 セリエAで挙げた初ゴールは、12月4日に行なわれたサンプドリアとのダービーマッチ。その試合を見逃してしまった筆者は、年明け早々、日本代表が出場したキング・ファハド・カップ(インターコンチネンタルカップ/サウジアラビア)を観戦すると、その足でジェノバに向かった。

 1995年1月15日、対パドバ戦。カズは後半28分、途中出場を果たすも、流れはパドバに。その挙げ句、同点とされてしまった。しかし、最後の最後になってカズは見せ場を作る。終了間際、右からの折り返しを鮮やかに決め、アントニオ・マニコーネのゴールをアシストした。

 事件が起きたのは、その2日後。夜の10時過ぎだった。滞在していたブリストル・パレスというジェノバ市内のホテルで、CNNのニュースを眺めていると、その画面はいつの間にか、ヘリコプターが映し出す映像に切り替わっていた。

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