フランスサッカーMFの系譜。代々受け継がれる「水を運ぶ」力がスゴイ (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 水を運ぶのは重労働だが、特殊な技能は要求されない。しかし、それなしには仕事にならないので重要ではある。フランスはアメリカほど人種差別が顕在化していないが、職業的な色分けはあった。アパートの管理人やホテルの清掃業はポルトガル、スペインの移民が多い。道路の清掃になるとほとんどが黒人である。いわゆる3K(きつい、汚い、危険)の仕事を引き受けているのがアフリカ移民などの黒人だ。

 サッカーのフィールドでは、黒人選手がスターを支える役割を担ってきた。ナント時代のマケレレはジャフェット・エンドラムを支え、レアル・マドリードではジネディーヌ・ジダンを補佐した。エンドラムとジダンはいずれもアフリカにルーツを持ち、エンドラムは黒人だが、彼らのチームでの役割はマイスターである。マケレレは彼らのために水を運ぶ人だった。

<守備的ウイング>

 現在ユベントスでプレーするマテュイディのポジションは、イタリアではメッザーラと呼ばれる。ワーキング・ウインガーだ。伝統的にイタリアのウイングは働き者で、サイド攻撃だけでなく豊富な運動量で中盤の守備にも貢献してきた。イタリア代表で言えば、フランコ・カウジオ、ブルーノ・コンティ(共に82年W杯優勝)、ロベルト・ドナドーニ(94年W杯準優勝)、マウロ・カモラネージ(06年W杯優勝)がこのタイプだった。

 マテュイディは運動量抜群、スピードもある。マケレレのように中央でプレーしたこともあるが、ワーキング・ウインガーにはうってつけと言える。攻撃では、ライン際でボールを持つ味方の内側をあがるインナーラップから、左サイドをえぐるプレーを得意としている。そして、守備は中盤を助けるという範囲にとどまらない。ポジションを的確に埋める戦術眼、戻るスピード、タックルのうまさがあり、守備面での貢献は大きい。

 18年ロシアW杯で優勝したフランス代表でも、マテュイディは重要なピースだった。

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