20年先を行っていたクライフの戦術。ドリームチームはこうして生まれた (4ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

 実際、周囲が考えていたより、バルセロナはずっとボールを支配するようになった。守備をする時間そのものが減少した。ボールを持っている間は守る必要がない、ボールを持つためのクワトロであり、だからフィールドの3分の1にもさほど興味がないわけだ。攻撃は最大の防御。

 ペップの背番号は4ではなく3だったが、クワトロはポジション番号である。オランダ式は後方右から機械的に番号を割り振っていくので、4番は4-3-3の左のセンターバック(CB)の背番号なのだが、クライフは3-4-3を採用していたので4番は1つ上がってアンカーの番号になっている。そして、4番の次は6番が戦術のキーだった。

 6番はホセ・マリア・バケーロ。ポジションはトップ下である。4-3-3ではアンカーのポジション番号だが、3-4-3では4番に押し出されて1つ上がっている。バケーロはワンタッチパスの名手だった。というよりワンタッチ専門の選手で、野球のバント職人のように、味方からの縦パスを壁のようにリターンした。たとえば、DFラインから中盤のラインを1つスキップする縦パスをトップ下の6番に当てれば、1列手前の中盤の選手たちは前向きでバケーロのリターンを拾える。

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