20年先を行っていたクライフの戦術。
ドリームチームはこうして生まれた

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

 サッキ監督率いるミランがチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)を制した1988-89シーズン、クライフはバルセロナの監督に就任し、カップウィナーズカップ(欧州各国のカップ戦優勝クラブが争った大会。99年に終了)を獲った。

 ただ、この時点でのバルセロナはまだドリームチームではない。最初の2シーズンは国内リーグでも優勝には届かなかった。しかし、3シーズン目にリーグ優勝するとそこから4連覇。クラブ初のチャンピオンズカップ優勝も勝ちとり(1991-92シーズン)、ドリームチームが出現している。

<戦術のキーは、4番、6番、9番>

 ペップのポジションは「クワトロ(4)」と呼ばれている。後方から確実にパスをつないで前線へ運ぶには、自分たちのDFラインの前、アンカー(錨/いかり)と呼ばれるこの位置にボールの集配に長けた選手が必要だった。守備の不安については、

「この部屋をひとりで守るのは無理だが、このソファの幅なら今の私でも守れる」

 クライフがインタビューで答えたのと寸分違わぬ言葉を、右腕だったカルレス・レシャックから直接聞いたこともある。ペップの両脇に選手を配置すれば守備範囲は狭くなり、ペップ自身の守備力は大した問題ではないという回答なのだが、そもそもそんなに守るつもりもない。

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