いつ、どこへ走るか。エムバペは自分のスピードの活用法を知っている (2ページ目)

  • 篠 幸彦●文 text by Shino Yukihiko
  • 西村知己●イラスト illustration by Nishimura Tomoki

Answer
右サイド裏に、パスを呼び込んでシュート

 1秒先のスペースが見えていたのか。あるいはストライカーの本能で嗅ぎつけたのか。いずれにしても左サイドからディ・マリアへロングパスが飛んだ瞬間、エムバペは脱兎の如く駆け出していた。

エムバペはためらいなく右前のスペースへロングスプリント。縦パスを受けてシュートを決めたエムバペはためらいなく右前のスペースへロングスプリント。縦パスを受けてシュートを決めた エムバペが走る先は相手のDFハイタム・アレーサミの背後だった。右サイドでフリーのディ・マリアにボールが渡ると、そこへアレーサミが釣り出される。しかしマウロ・イカルディが待ち構えていたので、中央のDFバカイエ・ディバッシーは釘付けにされ、アレーサミが離れたエリアをカバーできない状態だった。エムバペがいち早く嗅ぎつけたのはこの隙だ。

 エムバペがスライドの大きなスプリントで、アレーサミとディバッシーとのギャップに進入すると、ディ・マリアはそのスピードを殺さない柔らかな縦パスを送った。そこからディバッシーは慌ててイカルディのマークを捨てて追いかけるが、すでに遅かった。ボールと併走するエムバペは、右足のダイレクトシュートでニアサイドを打ち抜いた。

 エムバペは、ボールが左サイドから右サイドへ移った瞬間の判断が誰よりも早かった。そしてトップスピードについていける者は誰もおらず、そのスピード感でも正確にシュートを放つだけのスキルと余裕があった。これが21歳のストライカーが見せつけたゴールである。

【動画】ストライカーのオフ・ザ・ボールの動きがよくわかるゴール特集>>
(アミアン戦のエムバペのゴールは、1分35秒~2分09秒)

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