柴崎岳の本拠地は最果ての地に。欧州を席巻したデポル、運命の一戦 (6ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 タラレバ話をすれば、2人がいればこのシーズン、デポルティーボはCLで優勝していたと思う。

 イルレタ監督も、「シーズンオフに2、3人補強することができれば、翌シーズンもCL優勝を狙えるチームを編成できた」と、後に語っている。だが、クラブはそれをしなかった。拡大路線に終止符を打つ決断をした。

 人口25万の港町のクラブがCLで優勝を狙うことに、財政的な無理が生じたからだ。市民に尋ねれば、そのクラブの決断を受け入れる人は、受け入れたくない人より多数を占めた。1993-94シーズンの国内リーグ、最終戦でバルサに逆転負けした時の監督、アルセニオ・イグレシアス監督もそのひとりだった。悔しそうな表情45%、仕方がないという表情55%を交錯させながら、当時の話を述懐してくれた。

「デポルの奇跡」と呼ばれた栄光の日々からおよそ15年が経過した。デポルティーボは現在、スペインリーグの2部におり、柴崎岳が所属している。リアソールのスタンドは、チームカラーである青と白で塗り分けられているが、「リアソール・ブルー」と呼ばれているその青は、はやりどこか寂しげに見える。

 2004年5月4日。CL準決勝ポルト戦のピッチにマウロ・シウバとアンドラーデがいたら、話は違う方向に進んでいたのかもしれない。 

6 / 6

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る