柴崎岳の本拠地は最果ての地に。欧州を席巻したデポル、運命の一戦 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 筆者はその時、カンプノウにいた。バルサは後半に入るや、次々加点する。結局、5-2でアトレティコ戦を終えようとしていた。その時、リアソールで事件が起きた。デポルティーボがPKを獲得。ユーゴスラビア代表のミロスラフ・デュキッチがこれを決めれば、優勝はデポルティーボの頭上に輝くはずだった。

 カンプノウの観衆は、ラジオに耳を傾けていた。バルセロナのフリスト・ストイチコフは、試合中であるにもかかわらずタッチラインを越え、スタンドの観客のラジオに耳をそばだてた。デュキッチのPKは失敗した。デポルティーボはバルサに逆転優勝を許した。その初優勝の夢ははかなくも夢と消えた。リアソールでその試合を撮影していた知人のカメラマンによれば、その夜、ラ・コルーニャの街は、お通夜のような静けさに包まれたという。

 人口25万人の港町。とにかく風光明媚で魚介類がおいしい。のどかで素朴。ベベット、マウロ・シウバ以外にも、リバウド、サンパイオ、ジャウミーニャ、フラビオ・コンセイソンなど、ブラジル代表選手が次々とやってきたが、現地を訪れると、その理由がわかる。肩の力を抜いて過ごせる街。人間本来の生活を営むことができそうな理想郷。1、2日では帰りたくない異次元空間なのだ。

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