イニエスタが「スター性を求める」バロンドールに最も近づいた瞬間 (4ページ目)

  • ムツ・カワモリ●文 text by Mutsu Kawamori
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 およそ10年間に渡って、バロンドールのトロフィーを独占する2人の選手の活躍とかぶってさえいなければ......。

 サッカーはポジションごとにそれぞれの役割があり、時代とともに戦術のトレンドも変化する。個人タイトルの表彰の要件の中身も変化してきた。バロンドールに関して言えば、欧州内だけでなく全世界の記者に投票権が託されるようになった2007年ごろから、プレー内容やチームへの貢献度に加え、スター性などの商業的な価値が多分に含まれるようになったと感じられる。さらに、フランスフットボールとFIFAが提携し、「FIFAバロンドール」という名称が冠せられた2010年からは、それがより顕著になった(提携は2016年に解消された)。

「彼の何がすごいの?」と聞かれて、数字で表せないイニエスタのような選手にとって、不利な時代になったのかもしれない。

 だが、まだ希望は残っている。彼はまだ現役でプレーを続けているからだ。

 イニエスタがキャリアの最後に、故郷のチームであるアルバセテ(現在2部A)でプレーするという可能性もゼロではないだろう。そのアルバセーテが奇跡的にスペイン国王杯で優勝し、翌シーズンは奇跡的にヨーロッパリーグを勝ち取り、さらにその翌シーズンは奇跡的にチャンピオンズリーグで奇跡的に優勝したあかつきには......。

 その時は、なんとしてでも表彰式の取材パスを取得し、バロンドールを掲げるイニエスタの姿を撮影したいと思う。

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