イニエスタが「スター性を求める」バロンドールに最も近づいた瞬間 (2ページ目)

  • ムツ・カワモリ●文 text by Mutsu Kawamori
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ダボダボのユニホームに身を包んだ10番は、派手さこそなかったが、プレーは抜きん出ていた。「すごいものを見られた」と、同行した友人たちと帰路の電車で盛り上がったのを覚えている。

 バルセロナでプレーする姿を初めて撮影したのは、それから2カ月後のバジャドリード戦だった。最初は控えだったのでベンチに座っているところも撮ったが、彼に露出を合わせると他の選手が暗く写る。

 試合はバルセロナが前半に2点先行したものの、後半になってロナウジーニョが退場。さらに1点差に迫られて劣勢となった場面で彼が登場した。交替出場からものの数分でダメ押しのゴール(これがリーグ戦の初得点だった)を決めたイニエスタの名前は、「華奢・色白・24番」という符号と共に頭の中に刻み込まれた。

 その後、イニエスタがチームの主軸、というより世界的な名手になっていく様子を撮影する機会に恵まれた。今は意識して自重しているが、ファインダーを覗きながら「うおっ」とか「すげぇ」と呟いてしまうこともあった。横で撮っていた人はさぞ迷惑だったろう。とはいえ、「彼の何がすごいの?」と聞かれると、明確には答えられない。フィーリングが合ったとしか言えないのだが、毎回撮影するのが楽しみだった。

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