イニエスタが「スター性を求める」
バロンドールに最も近づいた瞬間

  • ムツ・カワモリ●文 text by Mutsu Kawamori
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

欧州スター選手列伝
極私的バロンドール(11)
アンドレス・イニエスタ(2011-12)

 2019年7月、神戸。試合前から私はすでにフラフラだった。当日朝にスペインから帰国して時差ボケ気味、そこに日本の蒸し暑さが疲労に拍車をかける。カメラマンとして重い足取りでピッチに出ると、撮影ポジション脇にあるスタンドの切れ目で巨大な送風機が稼働していた。風は生温かったが、これがなかったら試合中にダウンしていたかもしれない。

 ヴィッセル神戸対バルセロナ。「彼らはこんな条件でプレーをするのか......」と思いながら、ウォーミングアップ中の一団を眺めた。お目当ての選手は、その1年少し前、モスクワのピッチで撮影した時より、若干日に焼けて見えた。だが、あらためて周囲の選手と見比べると、やはり(一時は代名詞にもなった)「美白」だった。

2012年のユーロで大会MVPに選ばれたアンドレス・イニエスタ2012年のユーロで大会MVPに選ばれたアンドレス・イニエスタ 私が初めてアンドレス・イニエスタを撮影したのは、2004年の2月にバルセロナ郊外のサバディールで行なわれたU-21のスペイン対ノルウェー戦だった。激しい守備を見せる大柄なノルウェーの選手たちをものともせず、当時は右ウイングだったフアンフラン(現サンパウロ)やトップのセルヒオ・ガルシア(元エスパニョール)にすばらしいパスを供給し、時には自らドリブルで突破する。

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