デル・ピエロの驚愕のシュートは「世代交代のシグナル」だった (5ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • photo by AFLO


 左サイドから切れ込み、逆サイドネットに包み込まれるスワーブの利いたシュートは、芸術の域に達していた。

 1995−96シーズンのチャンピオンズリーグ決勝でアヤックスを下し、欧州王者に輝いたユーベは1996年12月、トヨタカップに出場するために来日した。

 対戦相手はラモン・ディアス率いるアルゼンチンの名門リーベル・プレート。デル・ピエロ&ジネディーヌ・ジダン対アリエル・オルテガ&エンツォ・フランチェスコリ、両チームが誇るクラッキの競演が注目されたが、主役となったのはデル・ピエロだった。

 0−0で迎えた81分、右コーナーキックをニアサイドのジダンがヘッドを流すと、ファーサイドでマークを外したデル・ピエロがゴールに背を向けてトラップ。素早く反転して右足を振り抜き、逆サイドネットを揺らした。

 その瞬間、席を立ち上がり、吠えたことを覚えている。何を隠そう、運良くプラチナチケットを手に入れた大学生は、極寒の国立競技場でこの試合を観戦していたのだ。もちろん、デル・ピエロ目当てで。

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