「東欧のマラドーナ」は技の宝庫。ハジの芸術的パスと伝説のゴール (2ページ目)

  • 渡辺達也●文 text by Watanabe Tatsuya
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 17年間もルーマニア代表に選ばれ続け、通算35得点は、アドリアン・ムトゥと並び、今なお破られることがない同国の最多記録だ。典型的なレフティで、ゲームをコントロールするのはもちろんのこと、針の穴を通すような正確なスルーパス、相手をあざ笑うかのようなトリッキーなプレー、ドリブル突破、そして自らシュートも狙う。その多彩なプレーぶりから「東欧のマラドーナ」と呼ばれていた。

 そのハジが一番輝いたのはやはりアメリカW杯だろう。大会前の評価は決して高くはなかった。注目選手のひとりではあったが、その評価は「プレーは一級品だが、ムラがあり好不調の波がある」というものだった。

 ルーマニアが入ったのは、開催国のアメリカ、コロンビア、スイスと厳しいグループだった。

 初戦の相手は優勝候補の一角にも挙げられていたコロンビア。当時のコロンビアは、カルロス・バルデラマ、フレディ・リンコン、ファウスティーノ・アスプリージャ、アドルフォ・バレンシアなど多くのタレントを擁し、南米らしいテンポのあるパス回しを得意とする注目のチームだった。

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