レアル「銀河系軍団」の瓦解──。
会長の強権がもたらした冬の時代

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 レアル・マドリードの会長は並の精神力ではできない。それは、現場の指揮を託される監督も同じである。

「マドリードでは、誰も満足しない。周りの要求は高くなり続ける。だから、我々はどんなチームよりも強い」(ラウル・ゴンサレス)

 強さを求めて膨張し、破裂した「銀河系軍団」の結末は何を示唆するのか――。

 2003-04シーズン、CLで準々決勝に進んだレアル・マドリードは、モナコと激突している。第1戦は、サンティアゴ・ベルナベウで4-2と勝利を収めた。冷遇を受け、モナコ移籍を余儀なくされたFWフェルナンド・モリエンテスにアウェーゴールを叩き込まれたのは不安要素だったが、勢いはあった。

 アウェーでの第2戦もラウルが先制に成功した。多くの人が、準決勝進出は決まりと考えた瞬間だろう。事実、現地では番記者たちが準決勝に向けた資料を漁り出したほどだった。

 しかし、異変が起こる。

 レアル・マドリードの選手の足が止まった。「あとは守るだけ」。そんな慢心か、心ここにあらず、だった。世界最高のアタッカーを揃えたチームは、そもそも守り切れる陣容ではない。前半終了間際に1点を返され、後半開始直後にモリエンテスに2戦連発ゴールを浴びると完全に浮足立ち、押し切られる形で3-1と逆転された。反撃に転じるべきだったが、戦意を失い、アウェーゴール差で敗退したのだ。

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