2020.04.03

レアルの歴史を塗り替えた唯一の男。
英雄が語った「マドリードの真理」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by MarcaMedia/AFLO

 27歳で入団しながら、リーガ歴代6位の得点数を誇り、10年連続で20得点以上を記録(カップ戦を含めて)。37歳の最後のシーズン、17得点で退団した。その後、2シーズン、エスパニョールでプレーし、現役を引退した。

「私が家を建てるとしよう」

 ディ・ステファノは詩的な表現をする人で、しわがれた声でこんなたとえ話をした。

「家を建てるなら、大学にでも通って学び、コツを教えてもらわないと、ろくなものはできない。5年か、10年か、懸命に学んでも、たいしたものができるかどうかはわからない。だけど、家を壊すだけだったら、ハンマーひとつあればいい。どうにか壊すことはできるだろう。わかるか? 何かを創る力こそが尊ばれるべきなのだ」

 その言葉はアルゼンチン訛りで、聞き取りにくかった。しかし、ゴールを生み出してきた矜持を強く感じさせた。

「私が偉大? マドリディスモという方舟があるだけさ。選ばれた者だけが乗れるが、やがて降りていく。誰であろうが、それは変わらない。マドリードの選手は何の言い訳もせず、何も求めず戦い続けるのだ」