レアルの歴史を塗り替えた唯一の男。
英雄が語った「マドリードの真理」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by MarcaMedia/AFLO

 1953-54シーズン、ディ・ステファノはリーガ・エスパニョーラデビューを飾り、マドリードに21年ぶりの優勝をもたらしている。それは、栄光の時代の幕開けだった。1955-56シーズンからは、欧州チャンピオンズカップ(現在のチャンピオンズリーグ)で前人未到の5連覇を達成。1964年に退団するまで、リーガでは8度の優勝を経験した。レイモン・コパ、フェレンツ・プスカシュ、フランシスコ・ヘントという名手をチームメイトに得たのも大きかった。

 特筆すべきは、ディ・ステファノが5度のチャンピオンズカップ決勝すべてで得点を挙げている点だろう。勝負強さ。それはその後、マドリードのエースの条件になった。いくら得点をしても、格下相手や勝負が決まったあとのゴールは重要視されない。たとえば、ゴンサロ・イグアイン(現ユベントス)はマドリードで記録した得点数は多いものの、大舞台での得点は少なく、最後までエースの看板を背負えなかった。

 ディ・ステファノは試合をするたび、その輝きを増した。無事これ名馬でケガも少なかった。その丈夫さと逞しさは、同胞のメッシと共通するかもしれない。

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