レアルの歴史を塗り替えた唯一の男。
英雄が語った「マドリードの真理」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by MarcaMedia/AFLO

レアル・マドリード王者の品格2

 レアル・マドリードは、ジネディーヌ・ジダン監督が率いる"世界選抜"のようなチームである。ウェールズ代表FWガレス・ベイルのように怪物的なポテンシャルを持った選手でさえ、ポジションは与えられない。チーム内の競争が、"外敵"と当たった時の強さに転じているのだ。

 その点、ひとりのスターが優遇されることはない。クリスティアーノ・ロナウドでさえも、それは同じだった。去る者は追わず。そこにマドリディスモの本質はある。マドリディスモはマドリード主義と訳すことができるが、"堂々と戦って勝利をつかみ取る"という教義、伝統、あるいは信仰のようなものか。クラブが選手よりも価値を持ち、その歴史を積み重ね、選手は常に入れ替わるのが鉄則だ。

 どれだけ優れた英雄的選手であっても、マドリード以上の存在にはならない。しかし過去にひとりだけ、例外のアルゼンチン人選手がいた。

レアル・マドリードの5年連続欧州制覇をもたらしたアルフレッド・ディ・ステファノとクリスティアーノ・ロナウドレアル・マドリードの5年連続欧州制覇をもたらしたアルフレッド・ディ・ステファノとクリスティアーノ・ロナウド 1950年代、アルフレッド"ドン"ディ・ステファノは、アルゼンチンの名門リーベルプレートでゴールを量産していた。最初に契約したのはバルセロナだった。そのままいけば、リオネル・メッシのさきがけとなるアルゼンチン人選手になっていたかもしれない。

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