バルサを救った「クライフの使徒」。
ライカールトが語った監督の本懐

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by MarcaMedia/AFLO

「ホワイトボードを使い、誰がどこのスペースを担当するのか細かく伝えれば、組織されたチームを作り出せる。これで、60~70%は勝ち負けが決まる。監督は正しく守り、正しく攻められるように、選手を配置しなければならない。ただ、サッカーでは選手の自主性に勝るものはない。彼らがチームの一員として、力を発揮できる環境を作る。それが監督の仕事だ。ボードはボード。監督の本懐は、選手の可能性を信じることができるかだよ」

 ライカールトは現役時代、戦術能力を感覚的な鋭敏さで出せた選手で、机上の話を好まなかった。徹底的に、選手のひらめきを促した。自由奔放な創造的プレーが相手を蹴散らす、と信じていたのだ。

 一度、筆者は監督室で彼のインタビューに同席している。会話中、ライカールトは煙草をふかし続けていた。有名なチェーンスモーカーだったが、落ち着き払ってたばこをくわえる格好は様になった。そこに少し苛立ったテン・カーテが入ってきて「練習を始めますよ」と急かすのだが、「客人が来ているから、始めておいてくれ」と返す。テン・カーテが鼻息を吐いて部屋から出ると、彼は再びたばこをうまそうにくゆらせた。

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