南野拓実ら技巧派アタッカーをプレッシング戦術にどう落とし込む? (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 アトレティコに合計スコアを2-2とされる、事実上の決勝ゴールを被弾したのは、その2プレーあとだった。失点の直接的な原因を、敵の選手に渡したGKアドリアンのキックに求めれば、その後に起きた2プレーの印象は薄くなる。だが、GKがキックをミスしても、その後のプレーがなければ、決定的なゴールは生まれなかった。

 ゴール右隅下を射貫いたジョレンテの右足シュートは、キックの質といい、コースといい完璧だった。まさに胸のすくような一撃だった。しかし、ジョレンテに送られたラストパスは、それ以上に高尚で、芸術的な匂いさえ発していた。

 ジョアン・フェリックスは瞬間、その左外側を走るジョレンテにはおよそ関心なさそうな素振りを見せていた。相手の注意を真ん中から右サイドに惹きつけ、そしてそれを確認したうえで、左斜め前方にパスを送った。

 ノールックパスと言えばそれまでだが、そのタメの作り方、雰囲気の出し方、意外性を生み出す身体の面の作り方......ジョアン・フェリックスのこのほんの1、2秒間の動きには、最近あまりお目にかかれなくなった技巧の粋が詰まっていた。

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