メッシの私生活を守る豪邸。
スーパースターが欲しがる物件の条件は?

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 フランスの天才FWキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)も、おおむね家に引きこもって暮らしている。自分に子どもができて、若い頃のパパはどんなに楽しかったのと聞かれたら、「何も話すことはない」と、エムバペは言う。

 世界最高のフットボール選手であるリオネル・メッシ(バルセロナ)は、カタルーニャの山に囲まれた村で、家族と静かに暮らしている。家があるのは、バルセロナ郊外のカステルデフェルスという村。隣家を買い取るなどして拡張やリフォームを繰り返し、広い敷地に小さめのフットボールのフィールドまで造った。

 ヤシの木とブーゲンビリアの花と白い壁が、メッシのプライバシーを守っている。地中海を臨むリゾート地のシッチェスは車で20分ほどだが、そこのナイトライフとも縁がない。メッシは息子たちを学校に送り迎えし、近所に住む親友でチームメイトのルイス・スアレスとバーベキューをしたり、マテ茶を飲んだりしながら、子どもたちのことを話す。

 フットボール選手の家をまとめて見ることができるのが、マドリードの西郊にあるラ・フィンカ。セキュリティーのためにゲートが設けられている超高級住宅街だ。

 ラ・フィンカには昔も今も、マドリードを本拠地とするクラブの一流選手がたくさん暮らす。クリスティアーノ・ロナウド(現ユベントス)、アントワーヌ・グリーズマン(現バルセロナ)、ガレス・ベイル(レアル・マドリード)......。みんな高い塀の向こうにあるグレーのモダニズムの豪邸の主になった。


 この住宅街で動いているものといえば、ゆっくり巡回している警備の車くらい。マドリードの繁華街は、はるか遠くに思えてくる。

 選手たちは邸宅に落ち着くと、生活面のことは人まかせにしてしまいがちだ。代理人のミノ・ライオラは、クライアントであるマリオ・バロッテリ(当時マンチェスター・シティ)が電話をかけてきて、「家が燃えている!」と言ったときのことを忘れられない。「いいから早く消防車を呼べ!」と、ライオラは言った。

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