2020.01.27

イブラヒモビッチが初めて買った家は
約5億円。サッカー選手の住宅事情

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 フットボール選手は初めての家を、故郷に買うことが多い。ズラタン・イブラヒモビッチは2007年に、スウェーデンの故郷の町マルメでいちばんいい家を473万ドル(当時のレートで約5億5000万円)で買った。イタリアネート様式の豪邸で、ジョギングをしていた時か、バスで通りかかった時に目をつけたものだった。

 イブラヒモビッチは家の壁に、自分の大きな足の大きな写真を飾った。家の代金をすべて払ってくれたのが、この足だった。

 初めての町への引っ越しは、もっと面倒だ。とくにそれが突然の場合には。

『ザ・シークレット・フットボーラー』という名でプレミアリーグの裏側を本に書いて話題を呼んだ選手(本の邦訳は東邦出版刊)の妻は、彼と一緒に住んだ最初の家にチームメイトが突然やって来た時のことを覚えている。

「あいつから連絡があったか?」と、チームメイトは尋ねた。連絡は来ていなかった。

「そのとき、フットボール選手はほかの職業とは違うのだとわかった」と、彼女は書いている。「彼は遠い町に行っていて、チャンピオンズリーグに出るようなクラブと契約を結んでいるところだという。『転職』するというのに、電話の一本もテキストメッセージもよこさないのだから」

 独身で10代の選手が外国に移籍する時には、もっと過酷な状況が待っている。10年ほど前まで、フットボールクラブは選手たちを大変な金額で獲得しながら、彼らを新しい環境に落ち着かせるためにまったく金を使わなかった。

 2001年、イブラヒモビッチが19歳でアヤックスに入ったとき、彼はオランダの郊外の町でひとりぼっちになった。部屋にあったのは、自分で持ち込んだスウェーデン製のベッドと60インチのテレビ、それにプレイステーションだけ。イブラヒモビッチは寂しさに耐えかねて、ブラジル人のチームメイトのマクスウェルに電話し、彼の家のマットレスで3週間寝た。

 国内での移籍でも厄介なことがある。ウェイン・ルーニーは18歳だった2004年、それまでプレーしたエバートンから50キロほどしか離れていないマンチェスター・ユナイテッドへ移った。ユナイテッドは2600万ポンド(当時のレートで約50億円)で獲得した選手に、ホテルの部屋をあてがった。