久保建英と香川真司。日本の新旧エースの対戦で見えた「現在地」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

 今シーズン、サラゴサの使命は1部昇格にある。第23節終了現在で4位(1、2位が自動昇格、3~6位が昇格プレーオフ)。マジョルカを一蹴したように、攻撃力は"看板"となっている。その切り札になるのが香川だ。その出来は、チームの浮沈のカギを握るだろう。

 一方、マジョルカは国王杯での敗退が決まった。

 1部残留がなにより優先される現在、サラゴサ戦は1.5軍というよりは2軍に近い布陣だった。選手のクオリティは2部、もしくは2部B(実質3部)に近いか。実際、2年前まで2部Bだったのだから、この結果に驚きはない。

 マジョルカのプレーは凡庸を極めた。プレッシングもかけられず、マーキングも緩く、目に見えてボール技術の低い選手もいた。とくにバックラインのちぐはぐさは深刻だった。

 そんななかで、2トップの一角で先発した久保は、能力の高さを示していた。右サイドを切り裂いてクロスを折り返し、相手を引きつけて完璧な崩しのパスを出し、厳しいチャージを潜り抜け、攻撃の起点となった。唯一の得点シーンも、2人を相手にボールを奪われないキープ力を見せ、パスを出したところから生まれていた。

 ふがいない戦いだったマジョルカにおいて、久保は悪いプレーはしていない。むしろ、苦しい条件でも技術を出せるタフさを見せた。反則同然のマークにも屈していなかった。マジョルカでプレーして半年、経験を重ねて成長を遂げた姿を見せていた。

 チームの目標は1部残留だが、戦力的に厳しい状況だけに、久保は最後までチームをけん引する姿を見せられるか――。久保にとって次の挑戦は、1部の攻撃的チームでの試合経験になる公算が高い。たとえば、新天地の候補のひとつに挙がるレアル・ソシエダは、ボールをつなげるオートマチズムがあり、ミケル・オヤルサバルなど、相応の選手を擁している。

 もちろん、レアル・マドリードに戻るという選択肢がないわけではない。しかし、今はプレー経験を重ねることを優先すべきかもしれない。

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