2020.01.16

西野朗監督がタイで愛されるわけ。
U-23選手権で大仕事を遂げている

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 この大会でタイがグループリーグを突破するのは初めてのことだが、彼らは決して弱者の戦法に徹し、耐えるだけのサッカーで勝ち点を拾っているわけではない。西野監督は言う。

「(今大会の)ホストとして緊張感もあるし、期待されているし、いろんなプレッシャーがあるなかで準備をしてきて、選手は(持っている力を)出し切っていると思う。まだまだ足りないところもありながらも、いいチャレンジはしている」

 初のベスト8進出を果たしたタイが、東京五輪行きのキップを手にするまで、あと2勝。まずは準々決勝を突破したうえで、準決勝に勝つか、3位決定戦に勝たなければならない。対戦相手がどこであれ、チャレンジャーであるタイにとっては厳しい道のりになるだろう。ともすれば、大敗を喫することもあるかもしれない。

 しかし、ただひとつ確かなことは、西野監督率いるタイは自分たちのスタイルを貫くということだ。なぜなら、彼らはそうすることが目の前の勝利だけでなく、”未来の勝利”への近道だと信じているからだ。

 西野監督は淡々とした口調で、しかし、そこに自信も漂わせ、語る。

「ホストのアドバンテージで(準々決勝まで)中3日。対戦チームよりも1日多いなかで準備できるのは、フィジカル的にも、メンタル的にも優位な状況。これを生かして、コンディションを整えたい。(第3戦で大幅にメンバーを入れ替えて)1、2戦の(主力)メンバーはかなりフレッシュになれたと思う。3試合を通してチームの戦い方や狙いもかなり統一できている。とにかく自分たちの強みを出していきたいなと思う。”タイスタイル”はポゼッションとスピード感にあると思うので、そこを生かした戦い方で挑んでいきたい」

 試合中、ずっとテクニカルエリアに立ちっぱなしだった指揮官は、試合終了を告げるホイッスルが鳴り響くと同時にピッチに足を踏み入れ、大仕事をやり遂げた選手たちと順番に抱擁。その後、選手とともに場内を一周すると、ゴール裏で、バックスタンドで、また反対側のゴール裏で、次々に「ニシノ! ニシノ!」の大合唱が起きた。

 微笑みの国と日本人監督の幸せな関係は、順調に育まれている。

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